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総合環境分析ブログ

『環境専門家になるには』に社員の記事が掲載されました!

なるにはBOOK

ぺりかん社のなるにはBOOKSシリーズにある、『環境専門家になるには』という本に当社社員のインタビュー記事が掲載されました。

ぜひこの本を読んでいただき、未来の環境専門家が増えるとうれしいです。

『環境専門家になるには』

出版社:ぺりかん社
出版社HP:http://www.perikansha.co.jp/



※上記の画像はクリックすると拡大して記事を読むことができます。

環境分析で人びとの暮らしを支える

水道水をあたりまえに飲めるということ

 日高さんは、水、土壌、大気などの環境分析を手がける企業で、水の分析を専門に行っています。
「あたりまえに存在する環境や安全はありません。表に出る仕事ではありませんが、”水の安全を守る”というみなさんの生活に直結している仕事をしているという点や、みなさんの暮らしを縁の下で支えているという点にやりがいを感じます」と、日高さんは自分の仕事の意義を語ります。
 私たちが水道水を安全に飲めるのは、その水が厚生労働省の定めた安全基準を満たしているのか(塩素化合物、トリハロメタンや大腸菌などが基準値を超過せず、かつ満たしているのか)、毎月調べられているためです。
同様に、河川の水については環境省が基準を設けています。都道府県知事の登録を受けて、その分析を担当する「計量証明事業」を手がける企業は、正しく分析できているかを毎年厳しく審査されています。
「基準を満たさない水も時々見つかります。近隣住民の方からの『この水は何かおかしい』という報告もあります。場合によっては、水道局などが直ちに給水をストップし、臨時の水質検査の依頼を受けます。速やかに対処することを心がけています」
 このような日高さんたちの仕事によって、私たちがふだん使っている水道水の安全は守られています。

水分析のプロフェッショナル

 日高さんは社内の分析室で、公園やマンションなどさまざまな場所の水道水や河川水を1日多い時には100個検体ほど分析しています。
水に含まれる物質の量を測定する分析機器(GC─MS〈ガスクロマトグラフ質量分析計〉、LC─MS/MS〈液体クロマトグラフ・タンデム質量分析計〉、
ICP─MS〈誘導プラズマ質量分析計〉など)に検体をセットし、水の中のVOC(揮発性有機化合物)やハロ酢酸、鉛などの金属成分など10~11項目の量を測ります。ひとつの分析機器に水の検体をセットしてスイッチを入れれば分析できるわけではなく、項目ごとに分析機器を使い分けて、機器のメンテナンスも含め日々作業をしています。検体によっては、分析機器にセットする前に試薬を入れて前処理をすることが必要な場合もあり、ここが工夫のしどころです。
また分析機器の測定条件などの改良も、分析をよりよい精度で行うために工夫が必要です。「水道水は綺麗なので比較的分析しやすいのですが、濁った河川水や工場排水などは、測定したい値がすぐに出てこない場合があります。
どんな前処理をすればいいか、どうすれば分析が成功するかを考え、試してみて、うまく分析できてお客さまのニーズに応えることができた時はうれしいです」
 とはいえ、毎日分析室にこもっているというわけではなく、自分で川に採水しに行くこともあるそうです。胴長靴を履いて川に入って採水したり、川の流速を測ったりもします。
「環境調査・分析の仕事を選ぶなら、外で体を動かすことが好きだといいと思います。生物や自然が好きな同僚も多いですね」
 実験室で静かに化学分析をしているイメージでしたが、意外な答えが返ってきました。

毎日、着実に、確実に

 日高さんの毎日の仕事は、始業の朝礼後に分析機器の立ち上げをすることから始まります。午前中に検体の前処理を済ませ、午後から測定をします。
分析結果が出るとデータを解析します。最後に分析室を片付けて帰宅します。時々、事例発表会を行います。
「基本的には法律に基づいた方法で分析をしますが、前処理の方法、測定条件の検討などは工夫できます。『私たちはこうした改善をしてみました』と情報を共有し、社内で知恵を蓄積して、スキルを培っています。コツコツと研究するのが好きな人には向いていますね」
 毎日100検体もの水の検体を分析するというのは、同じことのくり返しのように見えますが、飽きないのでしょうか。
「いいえ、いろいろなことが起こるので、毎日同じことのくり返しではありません。分析機器が正常に動かなかったり、分析するのが難しい検体があったりします。しかもその原因がわからないこともあります。
でも、10年この仕事をやっているとだんだんわかってきて、経験的に対処することができるようになってきました。特に分析機器が動かないと、分析がストップし、仕事がどんどん遅れていってお客さまに迷惑をかけてしまうので、
トラブルには速やかに臨機応変に対応します」
 分析機器の部品をいつ交換したかをきちんと記録しておいたり、検体を測定する前に標準物質の測定をして数値がおかしくないか確かめたりする日々の作業をおろそかにしないことがとても大事だそうです。
「分析機器は実はとても値段が高いのです。適切なメンテナンスをして常によいコンディションを保つことも分析者として大事なことです。何度も同じことを確認する作業をめんどうがらずにやります。コツコツと地道な作業を積み重ねることができる人や、『なぜだろう?』と常に考えられる人がこの仕事に向いていると思います」

大学で環境分析を始める

 東京都八王子市で育ち、中学、高校ではテニス部の部活動に熱中したという日高さん。「助ける、守る」ことに興味があり、環境を守る道を選びました。
「川で遊んだり、星を観たりと外で遊ぶのが大好きでした。物を組み立てたり、直したり、試してみるのも好きでした。小学生のころに川遊びをしていたら、空き缶がたくさん捨てられている所があって、これでは川の中にいる魚や川に来る鳥がかわいそうだと、友だちと一生懸命空き缶を拾い集めたことを覚えています。これは遊びのうちでしたが、このころから環境を守りたい意識があったのかもしれません」
 麻布大学環境保健学部健康環境科学科(現 生命・環境科学部環境科学科)に入学し、3年生の研究室選びでは、環境系で分析機器をたくさん保有していることを決め手として選びました。
「実験が好きでたくさん分析がしたかったので、分析機器がたくさんある研究室がいいなと思っていました。その観点は正解で、さまざまな分析機器に触れることができ、自分が分析機器を使いたい時にほかの人と重なることなくスムーズに実験できました。HPLC(高速液体クロマトグラフ計)やGC-MSという分析機器の使い方を学んでいたので、入社してその知識をすぐに活かせたのもよかったです」
 日高さんは環境分析を大学から学んでいたことからこの仕事を選びましたが、必ずしもそうである必要はないそうです。
「測定項目をひとつ会得するのに1年ほどかかります。先輩から測定の仕方や分析機器のメンテナンスの仕方などを習います。ひとつできるようになると、つぎの測定項目について学び、スキルアップしていきます。
環境系の学部の出身でなくても、修士ではなく学部卒でも大丈夫です。今まで水分析を専門にやってこなかった方も、先輩がサポートしますので、おそれずにこの仕事にチャレンジしてみてください」
 この仕事をするにあたって、必要な資格はあるのでしょうか。
「事前に必要な資格は特にありません。私は、今の仕事には直接関係ありませんが、有機溶剤作業主任者などの資格は大学在学中に勧められて取りました。働き始めてから、水質第一種公害防止管理者と環境測定分析士の資格を取得しました。今は環境分析系の主要な国家資格である『環境計量士(濃度)』の資格取得をめざしています。合格率15%ほどの難関ですが、この仕事をますます究めていきたいので、がんばって勉強しています」

環境と人びとの生活を守りたい気持ちが大事

 最後に、この道を志す人へのメッセージをうかがいました。
「『継続は力なり』という言葉がありますが、選り好みせず何事にも前向きに取り組み続けたり、うまくいかないことにも挑戦したりする力を身につけておくとよいと思います。そして、学歴よりも、環境に興味があること、実験が好きであること、環境や人びとの生活を守りたいと思う気持ちがいちばん大事です」
 日高さんは楽しそうに「私も環境について日々勉強中です」とお話ししてくださいました。

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